リフォーム最前線 No.2

「ヒアリング」と「共感」で顧客との関係を強化しよう。

今後、住宅市場の中心は新築からリフォームへと移行することが予想されています。
住宅の長寿命化によりリフォームの頻度、需要も高まっていくはず。
そこでポイントになるのが「紹介」「リピート」です。前回に引き続き、
鳥井貴正さん(アトリエノース代表)に顧客とのコミュニケーションについて語っていただきました。

住宅の長寿命化によりリフォームの機会が増える

私が住宅業界に関する講演を行うときに、いつもお伝えしているのは、これからはお施主さまとのコミュニケーション能力を高めることがいちばん大事、ということです。
これまでは、住宅を新築・リフォームする会社の評価は、施工精度や施工後の住宅性能といったハード面でほぼ決まっていました。そして、次の建て替えまで30 年はある(旧耐震基準)、と思うと、引き渡した段階で顧客へのアフターサービスの意欲が薄れてしまうのも無理はないかもしれません。

しかし、これからの住宅は間違いなく長寿命化します。ある試算によると、現在の住宅の寿命が60年平均だとすると(新耐震基準)、60年後の建て替えまでにかけるリフォームの費用は、新築1棟分に相当するのだそうです。これが長期優良住宅の仕様となると、100年にも及ぶことになり、これまでよりもリフォームの機会、頻度が増えることになります。ひとりのOB顧客に対しては、必ずリピート受注をいただけるように取り組んでいかなければなりません。

右の図上に掲げた方程式はその仕組みを表したものです。これまでは顧客の数にそれぞれの工事費(客単価)をかけ算したものが売上となっていましたが、住宅長寿命化時代では、そこへリピート数がかけ算されるというわけです。

お客さまとは引き渡し後もじっくり付き合っていかなければ、今後はおそらく事業として成立させるのは難しくなっていくでしょう。紹介による成約を中心に据え、顧客満足度を高めることで、お客様を自社のファンにするというサービス業的な考え方は、住宅業界・建築市場にはなかったものかもしれません。しかし、これからは頭を切り換えて、そうした課題に取り組んでいく必要がある、と思います。

顧客の期待を上回る提案を

私は、お客さまと継続的にお付き合いしていくうえでポイントとなるのは、「感動」だと考えています。

右図下の方程式のもうひとつは、その考え方を表したものです。お客さまの100の要求に100 で応えても満足度は100にはなりません。実際に私たちが提供したリフォームについてお客さまが感じた価値から「事前の期待値」を差し引いたものが、満足度として残るからです。

というのも、お客さまは「このくらいのことはきっとやってもらえるだろう」という期待をもってご相談いただくことになりますから、その期待値とイコールの仕事では、お客さまにとっては「当たり前」であり、満足度としては「予想通りにやってもらえた」というだけ。これならよそに頼んでも同じということになり、顧客満足度はゼロだと思ったほうがいいでしょう。

言われたことを上回るものを提供して「そこまでやってくれたのか」と思われるようでないと満足度はプラスになりません。引き渡し後に感じていただく満足を200に引き上げてこそ、顧客満足度は100となるのです。そうでもしないと市場での競争に勝ち抜くのは難しいのです。他社と同じレベルでは差がつきません。

そのためには、お客さまが感じる「価値」をどこに見いだすかが重要です。最近はよく「モノからコトへ」というフレーズを耳にしますが、私はさらに「シーンへ」動いているように感じています。
「新しいシステムキッチンが欲しい」というのはモノ。「娘と一緒に料理をつくりたい」というのがやりたいコト。そして「暮らしでどういう場面を過ごしたいのか」ということが「シーン」。この例では「家族仲良く暮らしたい」という思いのことなんですね。

「本当はこういうことを望んでいらっしゃるんですね」と掘り下げないと、提案に対して喜んでいただくことはできません。いまお客さまが自覚していることを実現するのは誰でもできることです。口に出して言ったことがないけれども、本当はこうなりたいという思いをこちらが感じ取って差しあげて、形にすることでワンランク上の提案になるのです。

そのために力を入れたいのはヒアリングです。お客さまの様子、口調に合わせてこちらも話し方や声の調子を調整する。矛盾する内容であってもいきなり否定したりせず、まずは言葉を差し挟まず、黙って聞く。お客さまの話しやすい環境を整えることに気を配ります。リフォームへの思いをすべて話していただきましょう。そこにきっと本当の要望が潜んでいます。そこに感動の種があるのです。

リフォームの仕事は工事を行って費用をいただいて終わり、ではありません。むしろそのプロセスからお客さまとの人間関係を築くことが大切です。そこから紹介やリピートなど、よりよい仕事で戻ってくるものです。